《MUMEI》 序曲 「待たんかっ!」 マカは黒い剣を片手に持ち、夜の山の中を駆けていた。 「シキっ! いい加減、大人しくしろ! 貴様は逃げられんぞ!」 「ハッ! 誰がお前等なんぞに捕まるか!」 マカが赤眼になり、追いかけるのは男だ。 赤い髪に、赤い両眼の青年は黒づくめの服装をしており、片手には日本刀を持っている。 「お前は禁を犯した! 許されることではないと知りつつなっ!」 マカは地を蹴り、シキの背後から切り付けた! しかしすぐに刀で防がれる。 「くっ…!」 「相変わらず人間臭い考え方だな、マカ。そんなんで本当に血族の当主なぞ務まるのか?」 「少なくとも貴様よりはマシだ!」 剣を押され、マカは後ろに下がった。 「俺の本能は知っているハズだ」 「知っていても理解は出来んな。少なくとも今の血族のやり方でも、満足は出来るはずだろう?」 「俺は生憎とヒミカのような自虐趣味が無いだけだ」 「ウソつけ! 貴様は影で人を喰らっている。それが血族の中では禁止されていると知っていてな!」 「フンッ。何でも禁止すれば良いというワケでもあるまいに。…そんなに俺を縛り付けたいのか?」 「お前が血族に背く限りは、な」 お互いに一触即発で殺気立つ。 「…では、俺は離属するとしよう」 しかし突然、シキは笑みを浮かべた。 「―そんなことが、許されるとでも本当に思っているのか?」 「まさか! 痛手は負うだろうが…できないことはない」 シキが刀を構えたので、マカも剣を持ち直し、構える。 「それはムリだな。お前がアイツの方に行ってしまえば、こちらは深手を負う」 「俺がマノンに従う、あるいは喰われるとでも?」 「ありえんことじゃないだろう? そうなる前に、始末してくれるわっ!」 次へ |
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