《MUMEI》
共犯
「いや、だから……」
「だから、なに?言いたいことがあるんならさっさと言ったら?」
挑発的な彼女の態度に、さすがのタイキもカチンとくる。
「それ、万引きしたんだろ。あの混乱に紛れてさ」
すると、彼女はフンっと鼻で笑った。
「やっぱり、そう言いたかったんじゃない」
そして、急に立ち上がり、すばやくタイキの口に食べかけのパンを押し込んだ。
「んがっ……!」
 突然のことに、タイキは目を白黒しながらパンを飲み込んでしまった。
それを確認して、彼女はニヤリと笑みを浮かべる。

「食べたね」
掠れた声が不気味だ。
「……え?」
「パン。食べたよね」
「……食べた、けど」
「これで、あんたも共犯ってわけだ」
「えー、共犯って、そんな」
しかし、彼女はタイキの言葉などまったく気にせず、再びベンチに座って新しくパンの袋を開けた。

どうしようもなく、途方に暮れるタイキ。

 彼女はそんなタイキを一瞥してから「座れば?」と言った。
仕方なく、タイキは彼女の横に座る。

「はい」
 彼女はジュースと菓子をタイキに渡した。
いったい、どれだけの量を万引きをしたのか、バッグからは次々と食料が取り出される。
「……ども」
いまさら断る理由もなく、素直にタイキは受け取った。
腹も減っていたのでちょうどいい。

しばらく無言で二人は食べ続けた。

そよぐ風が気持ちいい。

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