《MUMEI》

斎場に降る小雪が、冷たい風に舞って吹きつける。




ぽつんと一人、駐車場の片隅に佇むアンパンマン――…




その視線は、葬儀に居合わせる人々の顔を巡った。




故人の職場関係の友人知人の中には、アンパンマンの知った顔もチラホラと見受けられる。



一連の不祥事の渦中にいるアンパンマンは、その参列者の席に、しゃあしゃあと加わるだけの勇気が湧かなかったのである。




斎場に足を踏み入れることもできず――…




ただ躊躇うだけの惨めな時間は悪戯に過ぎてゆく…。




アンパンマンの呆けた視線は、相変わらず参列者の顔を見渡すだけだった…。

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