《MUMEI》
仕返し
.
触れるだけの、掠め取るようなキス
その一瞬に俺が目を開けると、
秀一の眼は驚きに見開かれていて。
我に帰った俺は
前の席の人が振り返ったりしないか、秀一を怒らせたんじゃないかって不安に駆られて
すぐに唇を離し
その至近距離のまま
瞼を伏せる様に秀一から眼を逸らして、謝ろうと口を開いた
「…ごめ……っ!?!」
瞬間、秀一に後頭部を押さえられて
再び唇が重なった
俺が反射的に眼を閉じると
開きかけた唇を割って秀一の舌が入ってきて
挑発するように俺の舌をつついた
「…ッ…ふ…」
吐息を漏らしてしまい
辺りに聞こえなかったかと目を開けると
秀一も俺を見てて、視線がかち合うと誤魔化す様に眼を細めた
秀一の瞳は、スクリーンの光を映しててキラキラしてて綺麗だった
やっべ…秀一のキス…
気持ち良い…
なんて、思ってたら
秀一が俺の頭から手を放した
それから俺の額を軽く押し、俺を引き剥がして
押し戻された俺が呆然と、大人しく席に座り直すと
「仕返し。」
秀一はこっちを見て笑った
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