《MUMEI》
届かない想い
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大学から家に帰ってすぐに、自分の部屋に向かった。

肩にかけていたかばんを、ドサリと椅子の上に置き、深いため息をつく。

シン…と静まり返った部屋。

その部屋の、机の上にシンプルなデザインの小さいボトルが素っ気なく置いてある。


この前、姉から貰った『P.S.ローズ』だ。


姉が、女物だよ?と、訝しそうに言いながら手渡されたその香水は、まだ俺の手元にある。



−−−別に、香水に興味があったわけではない。

バラの香りが好きなわけでもない。



それでも、その香水を譲って貰ったのは、

『P.S.ローズ』のイメージが、

響子の姿と、ピッタリ重なったから。



俺は、そのボトルを手に取り、少し眺めたあと、キャップを外して、スプレーを押した。

ミスト状に、香水が吹き出す。

瞬間、爽やかな香りが部屋の中を満たした。


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