《MUMEI》 . 俺は、目を閉じる。 −−−瞼の裏に広がる光景は、 太陽の光を反射する、きらめく海に面した、 小さな庭。 そこに美しく咲き誇る、何種類ものバラたち。 その、中央に、 儚げに佇む、華奢な女の影。 柔らかそうなウェーブをかけた、ロングヘアー。 白い肌。細い肩。 そして、 幸福感に満たされるような、 魅惑的な、微笑み………。 『P.S.ローズ』の香りすべてが、響子の存在を表現しているようで、 彼女が今、俺のすぐ傍にいるような、そんな気がして、 切なさに、胸が震えた。 けして届かない、想いに。 報われない、感情に。 透明感のある香りを、感じながら、 俺は、 深く、深く、息をついた。 ****** 前へ |
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