《MUMEI》 踏み出した先僕は嘔吐した。 目の前はまるで地獄。正気を保っているというだけでも勲章ものだと思う。こんな場所からは一刻も早く逃げ出したい。だがみっともないことに、足が震えて全く動けないのだ。仕方がないから腕で体を引きずった。匍匐前進と言うにはあまりに無様だけど、気にしている場合ではない。 視界いっぱいに広がった鮮血。 ピンク色した何かの組織。 バラバラに飛び散った肉片。 無残に転がる知った顔。 思い出しただけで発狂しそうになる。いっそ気絶してしまえたらどんなに楽だったか。 僕は甘かった。 覚悟はした。しっかりとしたつもりだった。でも全然足りなかった。だって今、僕は後悔してる。 踏み出した先がこんなに酷いだなんて、思わなかったんだ。 前へ |次へ |
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