《MUMEI》
クラブ会場
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廉に連れて来られたクラブ会場は、とんでもない人数で溢れかえっていた。


見渡すかぎり、ひと、ひと、ひと。

鳴り響くクラブミュージック。

お酒とタバコの臭い。


薄暗い会場は、異様な熱気と興奮に満ちている。

こういう場所に慣れていないわたしは、ただただ呆然とするばかり。


「…ひゃぁ」


呆気に取られすぎて、変な呟きをもらすと、廉は不敵に笑った。


「『庶民』丸出しだな」


意地悪い言葉にムッとして、言い返してやろうと振り返ったとき、

あ!と、声をあげた。


わたしと廉がいる場所から、目と鼻の先のところに、シャンパングラス片手に、背の高い男性と談笑している女の子を見つけた。

見覚えのある、顔だった。


「あれ、今、人気の女優さん!?」


高視聴率で有名なドラマの主役を演じている若手人気女優で、わたしもテレビで見たことがあった。
確か最近、何かの映画祭で助演女優賞を受賞していたのをニュースで見た。


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