《MUMEI》 「今の気分はどうだ?」 「恥ずかしくて…死にそうです///」 「じゃあ、死んだ気になって私と結婚してくれないかな」 やっと克哉さんの肩から下ろされ、足下がフラついて地面に尻餅をつきそうになった。 だけど克哉さんの逞しい腕が僕の指輪をした左手をギュッと力強く握って、僕を支えてくれた。 「答えは、アキラ…」 克哉さんが真っ直ぐな目で僕を見つめてくる。 そうやって視線が僕と合ってるという事は、しゃがんでくれているんだ…。 その瞳にはコンタクトレンズを装着しているから僕の事もはっきり見えているだろう。 いつもメガネを掛けているからそんなにマジマジと見る事は無かったけど、その蒼い瞳には少しだけブラウンも混ざっているという事に気付いた。 怖い顔だと思ってたけど、意外と可愛い唇。 金色に輝く髪だと思ってたけど、耳の後ろ側や襟足の根本の部分の髪は僕と同じチョコレート色をしていた。 全然、別の国の人だと思ってたけど、僕との共通点もほんの少しだけど見つける事が出来ると、なんとなく僕の心の中での距離が縮まったような気がした。 そうなると、僕の中で克哉さんへの愛着がフツフツと沸いてくる。 「…はなれたく…ない…克哉さん…」 僕はまだまだ若くて、判断が甘くて…過去にあんな事があったけど。 克哉さんは、そんな僕の全てを受け入れてくれた。 逆に、そんな僕の方がいいと言ってくれた。 克哉さんは、僕が想像出来ないくらい、全然…大人だ。 「ャだ……とおくに行かないで…」 「行かないよ…」 周りの街頭がキラキラと輝いているのは涙で目の前が見えなくなっているんだと思ってたけど、それだけじゃなく足下も回ってきた。 「だって克哉さん…この夏休みがおわったら…」 「キミを、私の家に連れて帰るよ」 連れて…帰るって…。 「ゆうかい…しゅるんですか…」 「違うよ、夫婦になるんだから、一緒の所に帰るのは当たり前だろ」 「ふう…ふ…///」 それだけ聞くと、僕の目の前がスーッと真っ白になっていった。 前へ |次へ |
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