《MUMEI》
霧の中で見つけたもの
ジリリリと喚き散らす目覚まし時計を黙らせることから僕の一日は始まる。しつこく睡眠を求める体に鞭打って起き上がり、向かう先は洗面所。冷水を被って自分を起こすと、キッチンにて朝食を作り始めた。
「……可もなく不可もなく……」
僕は一人暮らしをしている。となれば当然家事スキルは修得済み。だからと言って特別料理上手な訳でもない。ただ出来るだけ。
発言通り可もなく不可もなくな味の朝食を平らげると、食器をキッチンに運んで水に浸した。
洗い物は夜にまとめて片付けることにしている。朝は少し辛いのだ。時間的にも眠気的にも。さっき水を被ったのにも関わらず相変わらず眠い。一体何度包丁を血まみれにしそうになったか。中々起きない自分を恨めしく思いながら、歯磨きをした後に再び水を被った。
自室に戻ると学校の制服に着替える。所々に十字の模様があしらわれた割とオシャレな制服だ。僕が通う聖ガティス大学付属高等学校はミッション系の高校だ。規則は厳しいものの制服がオシャレな為、それ目当てに入学して来る者も多い。かく言う僕もその類だったりする。
……まあそういうヤツらは大抵、厳しい規則に堪えられずに自主退学していくのだが。
僕はそんな無様な真似はしない。

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