《MUMEI》 僕はマンションに住んでいる。学校も近く、家賃も安く、部屋もそこそこ。かなり好条件。ただ、商店街が遠いという難点がある。コンビニなら近くにあるが、僕はコンビニ弁当が嫌いだ。金もかかるし。 自分で言うのもなんだが僕はケチだ。しかも"ド"が付くほどの。毎回一週間ちょうどで無くなるくらいの量しか買わない。そして値切れる店では値切る。とにかく値切る。僕も一人暮らし二年目だが、おかげで八百屋のオヤジとはお互い好敵手(とも)と呼び合う仲だ。 そんな僕だが、久しく弁当というものを作った覚えが無い。かと言ってコンビニ弁当を買う訳でも学食に行く訳でもない。勿論抜くことはない。では昼食はどうするのか。 ……僕には、実に頼もしい友人がいるのだ。 「おーい、めーいーっ!」 サラサラの長い金髪。くりっとした大きな目。小動物のように愛くるしい顔。甘ったるいアニメ声。そんなチビッコがパタパタと僕に向かって駆けてきた。 「ぐっもーにん!」 「おはよう」 シュピッと効果音が聞こえそうなくらい勢い良く右手を挙げて挨拶するチビッコ。取り敢えず返事をしながら頭を撫でてやった。撫でられて気持ちよさそうにしているこいつは、毎度思うが子猫のようだ。 「今日も元気そうで何よりだ。そしてやはり今日も似合っていない」 「むっ! そんなことないよー!」 むくれながらそんなこと言っても、似合っていないものは似合っていない。こいつもいい加減認めればいいのに。 「いーや似合っていないぞ。お前にその男子の制服は」 性別を間違えて生まれた者。 世界一ロリという言葉が似合うショタ。 妹にしたい人No.1。 様々な称号をもつこいつ――長谷堂壮司は、どう見ても女の子にしか見えない男の子、そう、男の娘なのだ。 更に言うと、こんな形して僕と同い年。初めの頃は違和感が凄くて、まともに会話も出来なかったと記憶している。でも今は僕にとって『実に頼もしい友人』だ。 前へ |次へ |
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