《MUMEI》
ヒキコモリとのキス
自分で思っていた。

冷めた性格をしているって。

でもそれを表に出したら、生き辛いのは分かっていた。

だから人当たりのよさそうな顔をして、そこそこの成績を出して…周囲を騙していた。

そんなふうに生きて、楽しいと思ったことはない。

だけどオレにとっては必要なことだから。

何か…夢中になれることがあれば良かった。

でも勉強も運動も人付き合いもソツ無くこなせる。

趣味や何かに情熱を持つことは無かった。

生まれて14年で、オレの心は凍っていた。

―そう、彼に出会うまでは。

キッカケは母親だった。

近所に親戚が引っ越してきたのだが、そこの1人息子が引きこもりらしい。

だから歳と家が近いオレに、彼と仲良くしてほしいと、母親が彼の両親から頼まれたらしい。

何でも彼の両親は資産家で、会いに言って話をするだけで、おこづかいをくれるそうだ。

その金額を聞いて、オレはすぐにOKした。

今まで家族兼用でパソコンを使っていたが、自分1人用のノートパソコンが欲しかった時だったから。

次の学校が休みの日に、早速行くことにした。

彼の家は歩いて十分の所にあった。

家を見て、驚いた。

大きな和風の屋敷。

さすがはお金持ち。

彼と仲良くすれば、その金額も上がるかもしれない。

―その時まで、オレはそう考えていた。

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