《MUMEI》 後悔しても、もう遅い。 どんより暗くなっていると、部屋にノックの音。 「誰? 母さん?」 「あの、ボクだけど…」 …彼の声だった。 慌てて扉を開けると、本当に彼がいた。 「どっどうして…ここに?」 「あの、親に聞いて、その…。あっ会いたかったから」 彼は少し頬を赤くして、言った。 動揺する気持ちを抑えて、彼を部屋の中に入れた。 「最近、全然会えないから、心配してたんだ」 「そっか…。ゴメン。学校の行事が忙しくってさ」 笑顔でウソをつく。…ご両親のことは言えない。 「もしかして…親に何か、言われた?」 「えっ?」 真っ直ぐな眼が、オレを見る。 「キミがボクと話してくれたのは、ボクの親に頼まれたから…なんだろう? 知ってる…。でもボクはキミといるのが1番楽しいし、そういうとこは、親関係ないと思うから…」 胸がぎゅっと痛んだ。嬉しい言葉のハズなのに…! 「…ねぇ、1つ聞かせて?」 「んっ。何?」 オレは彼の眼を真っ直ぐに見つめた。 「あなたにとって、オレは何?」 「キミはボクにとって…」 彼は少し考えた後、真っ直ぐにオレを見た。 「1番、好きな人。1番、大事な人だ」 そう言って笑顔を見せるからっ…オレは彼に抱きつき、キスをした。 「んむっ…!」 「…好きだよ。オレもあなたが世界で一番好き!」 泣きそうな顔で言うと、優しく頭を撫でてくれた。 「うん、ボクもキミが大好きだよ」 甘く微笑んで、今度は彼からキスをしてくれた。 離さないよう、離れないように、オレ達はきつく抱き締めあった。 前へ |
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