《MUMEI》 その泥だらけになったアンパンの欠片は、かつて正義のヒーローだった男の心に、こう問いかけてくるようだった…。 (僕は―――… …いったい、どこで道を間違えたんだろう…?) 自問自答を繰り返すアンパンマンの礼服の肩には、白い雪が薄らと積もり始めていた。 (ジャムおじさんが作った美味しいパンを、たくさんの人達に食べてもらいたい一心で… …僕は、ここまで走り続けてきた…。 でも――――…) アンパンマンの思考が立ち止まったその時… 野良猫「ニャ〜。」 ―――… クン・クン・クン …。 どこからともなく現れた一匹の野良猫が、泥水のなかのアンパンの匂いを嗅いでいるのが目にとまった。 前へ |次へ |
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