《MUMEI》
足枷
 振り向くと、ユキナが青い顔でこちらを見ていた。
「なあ、一体なにが?」
「よくわかんない。それより早く!あいつらが」
ユキナが指した先には、警備隊が迫ってきている。
「あ、ああ」
頷きながら、再び逃げる人に混じって走り始めるユウゴ。

 走りながらユウゴは逃げる人々に、ある共通点があることに気がついた。
「みんな、足枷がついてる」
「え?」
隣でユキナが聞き返した。
「足枷だよ。ほら、見てみろよ。全員ついてる」
「………ほんとだ」
 ユウゴとユキナ以外、全員の片足に黒い、あの足枷がついていた。
しかしそのどれも、草野がしていたものとは微妙に違うようだ。

 草野のものより、少しだけ大きい気がする。

「この人たち、なんなの?」
「……俺に聞くなよ」
「そうだね。……どうでもいいけどさ、この道って」
「ああ。デパートへまっしぐらだな」
「まるで、私たちを追い込んでるみたい」
ユキナが言う。
 おそらく、まるで、ではなく確実に追い込んでいるのだろう。
「きっと、まとめて殺すつもりなんだろ」
「そんな!みんなに教えなきゃ」
ユキナはそう言って近くのまだ若い男に話しかけた。
しかし、彼はまったく耳を貸そうとしない。

彼だけではない。

誰もが皆、ユキナの声を無視して走り続ける。
よく耳を澄ませてみると、皆がブツブツと何か言っている。
「止まれない。走らなきゃ。死にたくない」
この言葉を繰り返し呟いているのだ。
「なんだ?どういう意味だ?」
「わかんないよ。ねえ、どうすんの?このままじゃ……」
「俺たちもデパート行きだな」
ユウゴがそう言った時、前方で再び爆発が起こった。

そして、二度、三度。

複数回、小さな爆発が連続する。
さらなる悲鳴が広まった。
だんだん細い煙の筋が近づいてくる。
「……げっ!」
 煙の下には同じように体の下半分がなくなった遺体が何体か転がっていた。

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