《MUMEI》
子の見解
「……好きだよ木下君。」

乙矢の父さんは飲むと俺の父さんを口説き落とそうとする。
ふざけていると思っていたのに、最近は勘繰ってしまう。


「はいはい、お休みなさいね?」

父さんも、告白され慣れてるせいか落ち着いている。
母さん達もだ。


「ちゅー……」

乙矢の父さんにキスされても父さんはけろりとしてるし。


「ブチュー!」

七生の父さんが二人に交互にキスすると二人はあからさまに嫌な顔をした。
妙な関係だ……、でも考えてみたら俺と七生はキスしてもなんでもないけど乙矢と七生は無理だもんな。


「いいおっさんが見苦しいな。」

乙矢が耳打ちしてきた。
まさか、気付いていたとか……?


「大人ってわかんない。」

つい、口にしてしまう。


「こらこら、近い。」

七生にラインを引かれた。


「ななおもチュー!」

七生父(内館の方)に熱烈なチューをされ、七生の絶叫がこだまする。


「仲良しだね、二郎君に木下君はしてあげないの?」

乙矢父が突拍子の無いことを言い出した。


「あー、二郎はよくチューしてたもんな。」

いつの話だ!
しかも母さんにだし……。


「もうしないよ、キスしたのは体温が無いと不安だっただけだから。もうそんな年じゃ無いし。」

七生や乙矢が居てくれたからその癖も抜けたし。
今は、七生がキスよりも俺に囁いてくれる言葉の方が温かい。


「痛い!」

乙矢に頭を噛まれた。


「お前等、目で会話すんな。」

どうやら七生と見合っていたのが不服だったようだ。


「欲求不満だ!」

七生が乙矢を指す。


「満たされとる!」

七生父が言い返す。


「親父は違う!」

乙矢への文句だが当の本人は知らん顔をしている。

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