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《MUMEI》 愛し慈しみ｢皆、次の授業は休もうか。｣ 理科はどこのクラスよりも進んでいる。 小さい声で文句も聞こえたが、俺は気にせずに律人を呼んだ。 ｢まずは皆に謝らなくちゃいけない。昨日、俺は先生としてちゃんと話し合えなかった。そして律斗には何故携帯を持っていたという理由よりも持っていたことを優先してしまった。それで皆に誤解を招いた。 ごめんな、皆。｣ 頭を下げる。 ｢先生がどうして謝るの？｣ ぽつりと、独り言を手前の生徒が漏らした。 ｢そうだ、規則を破ったからウチ先生は注意した。白戸はあの時すぐに理由を言わなかったじゃないか。｣ 後ろからも賛同する声がした。 ｢でも、言いたくないこともあるんだ。頭ごなしに決め付けてしまうのはよくなかった……律斗、悪いけど言うからな。｣ 律斗は黙って下を向いている。 ｢皆に内緒にしていたけど、律斗の父さんと知り合いだったんだ。凄くいい人だった、そして最近、事故で亡くなってしまった。 もしも、大切な人が亡くなってその人の持ち物が偶然テスト中に見付かったら、渡せるか？俺は無理かもしれない。｣ 俺は二郎が亡くなったら、無理だ。 ｢先生泣かないで……｣ しまった、感情移入し過ぎて泣いていたらしい。 前へ |次へ |
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