《MUMEI》

高校の校舎の近くに、同じデザインの十字架を掲げた更に大きな建造物がある。そちらは聖ガティス大学だ。大学ではあるが制服の着用が義務付けられている。制服と言うより修道士などが着ている服に近いのだが。そんな格好で町中を闊歩せねばならない大学生諸氏には同情を禁じ得ない、と思ったことがあるが、少し考えれば彼らは望んで大学に通っているのだからそんなものは不要だ。
「はわわ、まだ舐め終わってないよー」
壮司は急に慌て出す。早速『厳しい規則』が発動するのだ。
「ばか、だから三個目は止めとけって言ったのに」
我が聖ガティス付属では一切の立ち食いを禁じている。校外であろうと、無論。発覚すれば教育指導室直行となり、反省文最低十枚という罰が待っている。ちなみに飲酒喫煙は一発退学である。
教員は一人残らず堅物な為、壮司を以てしてもおねだりはまるで通用しない。しっかりと罰を受けさせられる。見慣れている壮司の家族ですら、涙目でお願いされると落ちるというのに、うちの教員にはほとんど効かない。人に対して本気で化け物かと思ったのは初めてだった。
「しょうがないから噛み砕け」
「はぁい……」
飴玉大好きな壮司としては、最後まで味わって舐め切らないと気が済まないらしい。以前、壮司の目の前で飴を噛み砕いたら酷く怒られたことがある。そんな壮司ではあるが、さすがに反省文十枚は嫌なのだろう。不満そうにガリゴリと飴玉を噛み砕いていた。
「おはようございます」
校門に到着すると、笑顔のシスターが迎えてくれた。そうか、今日は彼女だったか。
彼女はラフィ=コーデル。僕たちの担任教師だ。

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