《MUMEI》
交響曲
「まさかこんな近くにあったなんてなぁ」

海と山の間にある、廃墟と化した教会にクラスメート達を連れてきたオレは、肩を竦めた。

「まっ、こういうモンさ。それより感想はどうだ?」

学校が終わってから来たんで、すでに辺りは薄暗かった。

動画で見たままの廃墟。

しかしそこには誰もいなくて、死体なんかもあるハズなかった。

埃臭さが、年月を感じさせる。

「え〜、でもココなんでしょ?」

「多分な。オレが探した所じゃ、ココしかヒットしなかった」

不気味そうに辺りを見回すクラスメート達。

ふと入ってきた扉を見る。

するといきなり扉が音を立てて閉まった。

「えっ?」

「何? 何なの?」

「きゅっ急に扉がっ…!」

すると今度は窓に暗幕がかかり、一気に中が暗くなる。

「きゃあっ!」

「ちょっと! 何なのよ!」

悲鳴と怒号が廃墟の中に満ちる。

暗闇と声、そして次に廃墟を満たしたのは…血の匂いだった。

グシャッ…!

「がっ…!」

友人の最期の声が、間近で聞こえた。

生温い感触が、オレに降りかかる。

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