《MUMEI》
バレンタインのキス
ボクは今悩んでいます。

もうすぐバレンタインデー。

女の子達は楽しそうに、そして男の子達も浮き足たって見えます。

けれど今のボクは、きっと暗雲を背負って見えていることでしょう。

原因は…あの人。

「ねぇねぇ」

来た!

「チョコ、用意した?」

いくら男子校だからと言って、昼休みにいきなり背後から抱き付かれれば、視線は集まります。

なので。

「ちょっ…やめてくださいよ! 後で売店で買っておきますから!」

と嫌がって見せますが、相手はくせ者。

「え〜? そんなんじゃなくて、バレンタインの…」

「わーっ!」

慌てて彼の口を塞ぎました。

「ちょっ、こっちへ!」

彼の手を掴み、ボクは人気の少ない階段の踊り場に来ました。

屋上は立ち入り禁止になっているので、屋上に近い踊り場は内緒話をするのにもってこいだからです。

「いきなり人前で何を言い出すんですか!」

「もうバレていると思うよ?」

ガクッと肩を落としました。

そう…彼は目立つ存在です。非常に。

理由はこの高校の生徒会長だからです。

そしてボクは生徒会書記。

知らない人がいないほど、ボク達は有名なのです…。

「キミと付き合いはじめて、もう5年も経つんだしさ。いい加減、諦めたら?」

…ボクは選択を間違えたんでしょうか?

有名私立中・高学校として名高いこの学校に合格できた時は、スゴク嬉しかったです。

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