《MUMEI》

「それにしても、甘いなぁ」

ぺろっと唇を舐めた彼の眼に、危ない光が宿ったのを見て、ボクは一歩後ろに下がりました。

こういう眼をしている時の彼に近付いてはいけません。

ハッキリ言って、危険だからです!

でもボクの運動神経は並み。

人よりズバ抜けている彼の手に捕まるのは、あっという間のことでした。

「何で逃げるんだよ?」

「何かメチャクチャ身の危険を感じたからです」

両手首を捕まれ、身動きできないボクの顔を、彼は楽しそうに覗きこみました。

「そんな顔しないでよ。オレはキミの恋人なんだよ?」

「知っていますよ!」

そんなこと…言われるまでもないことです。

彼の眼が怖くて顔を背けると、今度は首筋を…!

「なっ何で舐めるんですか!」

「だって甘くて美味しいんだもん」

そう言って今度は頬を!

「ちょっチョコならちゃんとバレンタインデーに渡しますから!」

「あっ、もう用意してくれた?」

「しましたよ!」

高級チョコを彼は食べているから、ボクは簡単な手作りのチョコを毎年渡していたんです。

それでもボクの手作りということで、彼は喜んで食べてくれます。

すでに材料は買ってあるので、後は作れば良いだけの話なのに…この人は!

「いい加減にしないと、チョコあげませんよ?」

「うっ…。それは…困る」

彼が手を離してくれたので、ボクは距離を取ることができました。

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