《MUMEI》 オレはポケットからアイフォーンとイヤホンを取り出した。 イヤホンを付け、ピアノソナタを聴く。 荒々しい交響曲。 教会の中ではきっと、醜い悲鳴が飛び交っているんだろう。 オレはそんなもの、聞く気にはならなかった。 眼を閉じ、暗闇と曲を体中に満たす。 この曲は約10分―。 終わると同時にオレはイヤホンを外した。 「―終わった?」 「ああ、まあな」 シキの声は、背後から聞こえた。 血塗れのシキが、赤く長い前髪をかき上げた。 すでに5人は絶命し、シキに喰われた。 「どう? 少しは回復した?」 「まあな。だがイマイチだ。もっといいエサはないのか?」 「ムチャ言わないでくれる? コレでも苦労してんだからさ」 ポケットにイヤホンを入れて、オレはシキと向かい合う。 シキは上半身裸で、その右肩には何かに切られたような痕が。 そして腹には二発、銃で撃たれたような痕があった。 「まっ、逃げる分には回復できたな」 「何体喰ったんだっけ?」 「二ヶ月で34。そろそろヤツらにバレるだろうな」 「やり方を変えつつやっているけど、内容は同じだもんな。趣向を変えようと思っても、誘き寄せるのが目的だと変えずらいし」 前へ |次へ |
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