《MUMEI》

 かなたは色々な事を父や母に報告しているらしい。

 俺にもよくメールを送ってくれるが、たまに変な文字で送ってくるので内容がいまいち分からない事が多かったが…。

「お兄ちゃんはその人とずっと一緒に居たいんだって〜ってね」

 かなたが遊びに来た時、あきらの手にあった俺がプレゼントした指輪を見て大騒ぎしたので、ついその話をしたのだが、そのままマックス

に報告してしまったようだ。

「でも、その恋人さんが男の人なんだ、って…パパは怒ったりしないよね…ってかなたに言われたんだよ」
「…俺からの報告が遅れたのは、悪かったとは思うが…」

 そう、正直な所…どう報告していいか分からなかった。

 彼は男性で、俺も男性だ。

 そんな事を許してもらえるのか、正直言って不安だった。

「……責任は…とるつもりだ」

 父さんは俺の動揺を察したのか、俺の傍まで来ると背中に腕を廻し、きつく抱きしめてきた。

「怒ってたりするワケ無いじゃん…だって、みんな私の可愛い息子達じゃないか」

 そう言って子供にするように頭を撫で、優しく背中をさすってくれた。

「よしよし、克哉はイイコだねぇ♪」
「いつまでも…子供扱いか…」

 でも、それは…とても懐かしいカンジがした。


 俺の家では”父親”が”母親”で”母親”が”父親”だった。

 日本で住んでいた頃、さくらが外で仕事をしている間はマックスが子育てや家事をしていたらしい。

 公園や日本の色々な場所に俺を連れて行くと周りの子連れは女性ばかりだったのでその母親達と仲良くなり、そこで話していくウチに日本

語を覚えてしまって、日本語が女性が話すような言葉になってしまったらしい。

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