《MUMEI》

「天使様、か……。」

俺はつい、この人を美化してしまう。


「どうした?」

首を傾げ、まるで傷も無くなったように綺麗な人だ。


「独り言です。」

俺とあゆまの天使崇拝は止まないだろう。
どうしたって俺達には踏み込めない世界があるんだ。


「弟に伝えてください。あゆまには炊いたご飯食べさせてやって欲しいんです。」

ずっと買い食いだったから温かい、白い炊きたてのご飯を与えたい。


「組員って聞いて驚いたけど、よかった。安西で居てくれてありがとう。」

変わらない笑顔を見せる、それが怖くて俺はこの人を傷付けてから逃げた。


「……先輩が広告塔のポスターがあると救われましたよ。」

幸福な彼の笑顔が救いだった。
もっとこの人に優しくしてあげたかったと思えて、まだそんな感情が残っていた自分に安堵した。


「そんな、立派な人間じゃあないよ。
あゆま君が手紙書いてくれたんだ、出来たら、文通してあげて。」

本当なら断りたかったが、あゆまの顔がちらつくと上手い言い訳が出ず、承諾してしまった。

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