《MUMEI》 「天使様、か……。」 俺はつい、この人を美化してしまう。 「どうした?」 首を傾げ、まるで傷も無くなったように綺麗な人だ。 「独り言です。」 俺とあゆまの天使崇拝は止まないだろう。 どうしたって俺達には踏み込めない世界があるんだ。 「弟に伝えてください。あゆまには炊いたご飯食べさせてやって欲しいんです。」 ずっと買い食いだったから温かい、白い炊きたてのご飯を与えたい。 「組員って聞いて驚いたけど、よかった。安西で居てくれてありがとう。」 変わらない笑顔を見せる、それが怖くて俺はこの人を傷付けてから逃げた。 「……先輩が広告塔のポスターがあると救われましたよ。」 幸福な彼の笑顔が救いだった。 もっとこの人に優しくしてあげたかったと思えて、まだそんな感情が残っていた自分に安堵した。 「そんな、立派な人間じゃあないよ。 あゆま君が手紙書いてくれたんだ、出来たら、文通してあげて。」 本当なら断りたかったが、あゆまの顔がちらつくと上手い言い訳が出ず、承諾してしまった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |