《MUMEI》

 彼女がそう言って見せ付けた不意打ちの笑顔に、遮那王は思わず頬を染めてたじろいでしまった。
「れ、礼を言われるまでもない。縁があれば、また会うこともあるだろう」
「そうですね。また、お会い出来ることを期待しております」
 こうして彼女は鞍馬寺へと歩みを進めたのであった。遮那王は一人その場に残され、起きた出来事の余韻に浸る。
(齢は十六か十七か。私と大差ないように見える。それにしても、先に感じたぞっとする違和感は何だ? そして、思わず見とれてしまう程の妖艶な姿……どうも気になる。せめて、名だけでも訊いておけば良かっただろうか?)

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