《MUMEI》
甘いキス
ずっと可愛いと思っていた。

品のある上品な女の子。

お嬢様ってカンジの親友に、ずっとあたしは心惹かれていた。

でも恋愛感情じゃないと思っていた。

別のものだと思っていたのに…。

屋上でのお昼休み。

あのコの手作りのお菓子がデザートだった。

毎日、いろいろと作ってきてくれる。

お菓子作りが趣味なんて、ホントに別世界の女の子。

「今日はね、プリンを作ってきたの。好きでしょ?」

「アンタの作るお菓子は、全部あたしの好物よ」

そう言って頭を撫でると、嬉しそうに可愛く微笑む。

プリンは素材の味が活かされていて、とても美味しかった。

あたし好みに甘さ控えめなのも嬉しい。

「明日は何が良い?」

「そうだねぇ。ゼリーが良いな」

「分かった。何味が良いかな? 季節的に桃とかが良い?」

楽しそうに話す彼女。

この瞬間が一番幸せだった。

誰にも邪魔されず、二人きりでいられるこの時間が。

なのに…。

一足先に食べ終えたあたしは、ハンカチで口元を拭いた。

そして彼女もあたしより後に食べ終え、一息ついた。

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