《MUMEI》

「先輩!!」


一時中断のコールが鳴らない内に、
俺は先輩の元へ駆け寄った。


「先輩、大丈夫ですか!?」


「っ……。」


……大丈夫な訳ない。


後頭部を抑え、
悲痛な表情を浮かべて蹲(ウズクマ)る先輩を見て思った。


不意をつかれた、
後ろからの衝撃は一溜まりもない。


ましてや、先輩は本日2回もぶつかっている。


我慢出来るのがやっとのはず。


俺はそれ以上掛ける言葉も見つけられずにいた。


ふと隣りを見ると九条がいた。


九条は大袈裟に痛ぇ!!なんて言いながら、
こちらを盗み見ている。


その表情はあの時の榊原と同じ、
気味の悪い笑顔だった。


やっぱり、わざとなんやな。

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