《MUMEI》

先輩がヘディングシュートを決めようとした時、
突然背後から九条が飛び出して来た。


その形相はとても冷徹で、
殺人でも犯しそうな恐ろしい目付きをしていた。


思い出して、また背中に悪寒が走る。


先輩はボールに気を取られているため、
九条に気付くはずもない。


九条はその隙に先輩の後頭部目掛けて、
自分の頭を故意にぶつけたのだ。


許せない。


怒りで拳が震える。


もうダメだ。


一度キレたらどうしても歯止めが効かない。


俺は九条に向かって歩き出した。


「おい。」


思ったよりも凄味のある声に、
我ながら驚いた。


九条は俺が話かけて来るなんて予期していなかったのか、
一瞬目を見開く。

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