《MUMEI》

「謀られた。数合わせとかデマかよ」
恨めしげに俺を睨む。
良心の呵責が少し痛むが、気に止めてはいられまい。

「七生……知らないんだ」
乙矢は顎を両手に置いて机にもたれ掛かって笑う。眼鏡の奥で目が光ったような気がする。

「乙矢!」
ヤメテー!乙矢の口を押さえようとするが勝てる訳もなく。

「不真面目で部活へ二回しか来てない除名寸前なお前のために二郎が顧問に頭下げて朗読に参加させたいって頼み込んだんだけど。」
早口でスラスラ話して、アナウンスに乙矢が出ろ。


「七生には部活動に打ち込んでほしいんだ。
折角の高校二年でいられる一年間無駄にしてほしくないんだよ」
言った……。


「お節介」
七生が静かになっている、珍しい。
俯いてるから顔は分からないけれど睨まれたかもしれない。
出ていってしまう。




「俺、ちょっと行ってきます。」




「よくやりますね
放っておいたらいいじゃないですか、内館先輩やる気無いんでしょ。」
追い掛けるべく席を立つところで高遠の一声。



「七生はやる気ない訳じゃない」
つい、強く言ってしまう。悔しい。そういうふうに思われていた事が。

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