《MUMEI》

「そいつは用さえ済めば、お前を喰らうつもりだぞ?」

「だろうね。それも分かってての協力だから」

「まったく…。我が同属に魅入ってしまった者は、何故こうも不幸になる道を選ぶのか…」

「お前の言う言葉ではないな。マカ」

シキは鞘から刃を出した。

「とにかく、ここで終わりにしようか」

マカは左手を上げた。手には紋様が浮かび、やがて空中に浮き、黒き剣に姿を変えた。

「少々時間をかけ過ぎた。シキ、お前はここで狩ることにする。それが血族の決定だ」

「…コウガはどうする?」

「記憶を消して、元の生活に戻す」

「っ!? そんなのはゴメンだ!」

突然コウガが声を張り上げたので、全員がぎょっとした。

「シキのことは忘れたくない…! 忘れさせられるなら、殺された方がマシだ!」

「なっ…! コウガ、お前…」

驚いたシキが刃を下ろし、コウガの頬に触れようとした瞬間。

影が2人を包み込んだ。

「しまった! マノンか!?」

2人の姿は影に飲み込まれ、やがて影さえも消えてしまった。

「マノンっ…! またも私の妨げになるのか!」

怒りに満ちた表情で、マカは剣を床に突き刺した。

そして割れたステンドグラスから見上げた空には、血のように赤い満月が浮かんでいた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫