《MUMEI》

高校の中をいろいろと案内されたけど、あたしはどこか上の空だった。

先輩はキレイになっていた。

キレイで明るくて優しい。

とても人気のある先輩だった。

だから…あたしも恋したんだけどね。

この二年…忘れるのに必死だった。

勉強に友達付き合いに一生懸命になったおかげで、県でも有名進学校に推薦で入れた。

なのにっ! …リサーチ不足だった。

せめて先輩がどこの高校に通っているかぐらい、前以て調べておけばよかった。

「今日、新入生代表で挨拶してたわよね?」

「えっええ。あっ、見てました?」

「うん、もちろん! 体育館の隅の方で」

今日は教師と保護者、そして新入生しか体育館に集まっていないハズだった。

「あなたがここに入学するの、新入生名簿で見て分かってたから。あっ、わたし生徒会書記になったの。良かったら生徒会に入らない? あなただったら、中学時代の時みたいに力になってくれそう」

…そりゃ、中学時代も生徒会に入っていましたよ。

副会長だった先輩目当てで入って、2年からは会長も務めました。

けれど、ね。

「…遠慮しときます」

「えっ、何で? 何か入るクラブ、決めてたの?」

「決めてはいないですけど…先輩と一緒にいるのは、まだちょっと辛いですから」

ここでハッキリ言っておいたほうがいいだろう。

「わたしと一緒なのは…イヤ?」

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