《MUMEI》

「あの日…先輩を一方的に傷付けてしまったんだから、素直に諦めようと思っていました」

「きっ傷付いてなんかっ…! たっただちょっと、びっくりしただけで…」

「じゃあ、イヤじゃなかったですか?」

「うっ…うん。イヤじゃ、なかった」

真っ赤な顔で俯く先輩は、やっぱり可愛い。

だから、キスをした。

甘く柔らかな唇。

二年ぶりの先輩の唇。

「…今はどうです?」

「今も…イヤじゃないよ」

あたしは先輩を抱き締めた。

柔らかく、あたたかな感触。


「―好きです、先輩。…二年間、待たせてすみません」

「…うっううん! わたしの方こそゴメンね!」

先輩はあたしを強く抱き締め返した。

そして二人でしばらく抱き合った後、笑顔で離れた。

「…えへっ」

「じゃ、次は生徒会室に案内してくださいね」

「えっ?」

「二年も空白の時間があったんですよ? あたしは先輩と一分一秒でも一緒にいたいんです。だから、入ります」

先輩の手をぎゅっと握り、歩き出した。

「生徒会に!」

「あっ…!」

そして二人、歩き出した。

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