《MUMEI》

『…そうか…』

陛下の瞳に悲しみが
宿る。


『陛下、あの時申し
上げた事、覚えてお
いででしょうか?
暗示は一度切り、二
度目は無いと。』


『あぁ、確かにそう
聞いた。』


『殿下が惨劇を繰り
返された時は、もう
正気には戻れません
ので…』


陛下は、マルクスに
頷いて見せた。


『分かっておる、そ
の時は、私がレイノ
ルドの時間を止めよ
う、それ以上罪を重
ねぬ為に。』


マルクスも、陛下の
言葉に無言で頷いた


…レイノルド…

これ以上、過ちを起
こすなよ。私はお前
を失いたくは無いの
だから…。


陛下とて人の親、自
ら息子を手にかけた
くは無いのだ。

しかし、陛下も困っ
ていた。

惨劇の原因となる夢
視をレイノルドから
遠ざけたいが、無理
矢理だと、王妃の二
の舞になるし、傍に
居ても過ちを起こし
兼ねないのだから…


陛下の苦悩を余所に
歯車はゆっくりと軋
みながら回転を始め
ていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫