《MUMEI》

映画の内容なんて










覚えてない

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いつの間にか秀一の手も俺の手から離れてた




映画の主人公とその恋人がいい感じのムードになってて


俺はなんか気恥ずかしくて、ジュースのストローを口に運んだ

氷が融けて薄味になった、アイスコーヒー。


旨くは、ないな



「俺にも」
秀一が俺の肩に手を置いた


「…まじぃぜ?」

それでもいいか、って訊いたら
秀一は自分のカップを掲げて見せた

「俺の無くなっちまったから。くれよ」




…間接キスか





あんな事した後のくせに、俺はぼんやり思った


俺がコーヒーを渡すと
「サンキュ」

ストローを吸って

すぐ放した





「俺、ホットの方が好きだ」

秀一は左手にカップを持ち替えて、右手でストローを掴んで

俺の口に押しつけた



「?」



俺がわけも分からないままストローを吸うと



「くれ」秀一はカップを置いて笑った





――くれ…?






――それって



「…ン……く…」
秀一の喉が鳴る




――こういう、ことだよな…?






唇を放しておずおずと秀一の瞳を見ると



「…温りぃ」

秀一は満足げに俺の頭を撫でた

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