《MUMEI》

そして、少年の姿は消えてしまった。

警察や周囲の人々が一生懸命捜しても、見つからなかった。

やがて彼岸花も枯れてしまい、少女の姿も土手から消えてしまった。

だが周囲の住人達は、ボソボソと険しい顔で話をしていた。

あの土手のことを―。



昔、あの土手が死体を埋める場所だったことを。

その死体の大半は、食料が無く、見捨てられた子供が生きながらに埋められたことを。

いつの頃か、土手には彼岸花が咲くようになり…死体の数だけ花の数は増えていったということを。

やがて…彼岸花が咲く時、1人の美しい少女が現れるということを。

そして彼岸花が枯れる頃、若い男性が必ず消えてしまうことを…。



一年後。

土手には再び彼岸花が咲いた。

昨年よりも数が増えていることには、誰も気付かない。

そして再び、少女は現れた。

彼岸花を愛おしむように見つめている。

その足元には…白骨の手が土から出ていた。

少女は視線を感じて、顔を上げる。

背広を着た若い男性が、こっちを見ている。



少女はゆっくりと、微笑んだ。

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