《MUMEI》 「…あ〜。確か廊下で二年の男子に絡まれてた…」 「はいっ! あの時はちゃんとお礼もしないで、すみませんでした」 頭を下げられ、慌てた。 「うっううん、良いのよ。結構アタシ、ケンカっ早いからさ」 そのせいか……男よりも、女の子に人気がある。 彼女みたいに告白する子も、一ヶ月に一人はいる。 ちなみに男だと一年に一人いるかいないか…。 無表情で、男10人相手してもへっちゃらなせいだろうな。 「先輩、困っている女の子を見て見ぬフリはできないんですよね。ステキです!」 …まあそれもあるけど。 血の気が多いのが原因だろう。 「そんな先輩の、特別な女の子になりたいんです!」 うわ〜、ハッキリ言うコだなぁ。 でもまあ悪い気はしない。 アタシ元々、恋愛対象で性別こだわらないしなぁ。 「でもアタシと付き合ってもおもしろくないと思うわよ? 格闘技が趣味だし、ガサツだし」 「全っ然構いません! 先輩はそのままで良いんです! ただわたしを好きになってくれれば!」 こっ拳をつくって力説されてもなぁ。 このコ、確かにブリッ子だけど憎めない可愛さがある。 付き合ったら、アタシが人付き合いがヘタな分、フォローしてくれそうだな。 …って、いけないいけない。 「でっでもね…」 「ダメですか?」 うっ…。今度は大きな目に涙をうるうるさせて、見上げてきた。 …そうか、こうされたら女でも弱いんだ。 前へ |次へ |
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