《MUMEI》
大晦日
年末の28日から貢は帰省した。
それに合わせるかの様に日高が泊まりに来て今日で3日目、そう、今日は大晦日。
期末考査の結果が悪かった日高の勉強を面倒みてやりつつ俺は休み中の課題を全部やっつけた。
「佐伯の教え方マジでわかりやすいよ、佐伯さー、将来教師になれば?」
「違うよ、日高が覚えいーんだよ」
うん。日高は基本、覚えはいーんだ。
ただ、納得がいく理屈がないと素直に覚えられないタイプなだけで、これは解き方はこうなんだから、なんでそんな解き方で答えが出るのかなんて考えるなって教え方だと躓くタイプ。
だから中学時代までは成績よかったのに高校入ってからそんないい加減な教師に囲まれて日高は成績ががた落ちした。
学期開けにまた考査がある。
その考査と2月の考査で来年度一緒のクラスになれるかどうか明暗がわかれる。
日高は基本的にそれなりの大学狙っているからこれだけは落とす訳にはいかないらしい。
ちなみに俺らのクラスの特進科は大学の推薦先も他のクラスとは違いずば抜けていいところばかりなのもある。
まあ俺らと同じクラスでいたいっていうのもあるみたいだけど…。
「初詣でどうしようか?」
日高は窓際に立ち外を眺めだした。
「う〜ん寒いのは嫌だなあ」
「じゃあやっぱ行くのよそうか?」
「つか朝にしよーぜ?その方が日高もいーんじゃねーの?
ほら、どうせなら誠とも行きたいだろ?」
「……、うん…」
日高はちょっと顔を赤らめて俯いた。
クリスマス二連休したつけでずっと休みなくバイトが入ってる誠。
しかも大晦日は店でカウントダウンするとかで帰りは朝になるとか…。
まあ辛うじて元旦と二日は店が休みみたいだけどね。
「やっぱり行こう!おいコート着ろよ!」
「え?佐伯?」
「いーから行くぞ!」
▽
▽
「電車乗ってまでって、どこまで初詣で行くんだよ」
「まー黙って着いてきなって」
もう11時を回っているのに電車の中はごった返してる。
結構紅白観ない人多いんだな。うん。
結局座れないまま俺達は電車を降りた。
俺は日高の前を歩き、前に通った記憶を頼りに、そこに着いた。
「…ここ…、この店の名前…」
「ほら、入るぞ」
俺は日高の袖を掴み店のドアを開けた。
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