《MUMEI》

「や、一人で何処行くの?」

乙矢のさんに呼び止められた。


「つまみを買い出しに……」

悪酔いしないように散歩も兼ねて。


「一緒にいいかい?」

乙矢父は断らせない笑顔が得意だ。
これは美作家の一子相伝に違いない。


「おじさん、結構足元きてますね。」

ふらついてて危なっかしくて、つい、支えてしまう。

「ふふ、木下君にもよくこうして支えられて帰ったよ……いつも正気でいられるのは彼だった。」

乙矢父が父さんのことを話すときは少年のようだ。


「父さんとの馴れ初めってそういえば聞いたことないなあ。」

馴れ初めって、まるで恋人同士じゃないか。


「そうだなあ、本命のとこに落ちてね。浪人が嫌で滑り止めの大学に通ったんだ。だから、不真面目な学生だったんだけどさ。」

乙矢父が受かったとこって結構なレベルのとこじゃないか……。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫