《MUMEI》 「や、一人で何処行くの?」 乙矢のさんに呼び止められた。 「つまみを買い出しに……」 悪酔いしないように散歩も兼ねて。 「一緒にいいかい?」 乙矢父は断らせない笑顔が得意だ。 これは美作家の一子相伝に違いない。 「おじさん、結構足元きてますね。」 ふらついてて危なっかしくて、つい、支えてしまう。 「ふふ、木下君にもよくこうして支えられて帰ったよ……いつも正気でいられるのは彼だった。」 乙矢父が父さんのことを話すときは少年のようだ。 「父さんとの馴れ初めってそういえば聞いたことないなあ。」 馴れ初めって、まるで恋人同士じゃないか。 「そうだなあ、本命のとこに落ちてね。浪人が嫌で滑り止めの大学に通ったんだ。だから、不真面目な学生だったんだけどさ。」 乙矢父が受かったとこって結構なレベルのとこじゃないか……。 前へ |次へ |
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