《MUMEI》
死というもの
わたしは同じクラスの男の子に言いました。

「あの…どこか具合悪いところとか、無い?」

男の子は笑って否定しました。

その翌日。男の子は登校の途中で、車に轢かれて亡くなりました。



わたしは隣の家のおじさんに言いました。

「最近事故とか多いから、気をつけてくださいね」

おじさんは笑って、お礼を言ってくれました。

次の日。おじさんは足を滑らし、川に落ちて亡くなりました。



わたしは幼馴染の女の子に言いました。

「何か悩みとかない? あったら、遠慮なく相談してよ?」

女の子は弱弱しい笑みで、頷きました。

その夜。彼女は自ら手首を切って、亡くなりました。

「ふぅ…」

わたしはお葬式帰り、深く息を吐きました。

…どーも注意はズレてしまっているみたいです。

わたしの目には、亡くなった人達の葬式のイメージが映るんです。

死期が近くなると、亡くなる人は黒いモヤに包まれ、お葬式のイメージがわたしの目に映ります。

でも何が原因で亡くなるのかは分からなくて…、毎回それとなく言葉をかけてはいるんですが…。

効果は無いようです。

ただ見えるだけの、無力なわたし…。

わたしはけれど、立ち止まり、振り返ります。

葬儀場から吹き上がる黒いモヤ。

…やがて、わたしにもあの存在が近付いてくるのでしょう。

黒いモヤの正体…。

白骨の体を黒い布に全身を包み、巨大な鎌を持つ、




―死神。



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