《MUMEI》

「お、落ち着きぃな、阿騎、モテるやろ?オレ男…」

「関係ないよ、言ったでしょ、俺はリュウが欲しいんだって。」


見たこともない真剣な顔をした阿騎に気圧されながらも逃げようと体を捩らせる。


「リュウ…逃げないで…」


声の調子が不意に変わり、鳶色の目に苦しげな光がよぎる。


「ここから…、俺の側から…逃げないで…」


「阿、騎?」


「どこにも、行かせたくないんだ。」


完全に混乱したオレに阿騎の再びの口づけを避ける事はできなかった。


「リュウ…好きだ…逃げないで。」


そのまま再び阿騎の手が肌に触れだす。

受け入れ難い事実に変わりはないのに、あの声と目に縫い止められたように最初の様な抵抗はできなくなっていた。

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