《MUMEI》

明日から、全国的に夏休みが始まる。皆が心待ちにしている、1ヶ月ほどの、長いバカンス。

なのにこれから、有り難くもない校長の長ったらしい挨拶を聞いたり、見たくもない成績表を受け取る為だけに、学校へ行かなければならない。

いっそのこと、終業式などという下らない式典を省いて欲しいものだ。

空を見上げながら、真尋がまたため息をついていると、

「真尋」

背後から呼び掛けられた。
ゆっくり振り返ってみると、そこに、彼の父親である天河 雪尋(テンカワ ユキヒロ)が立っていた。

「早く行かないと、遅刻するよ」

雪尋はにこやかに微笑み、息子に言う。真尋は半眼で父親を睨みながら、「わかってる!」とぶっきらぼうに答えた。

「父さんこそ、講義、間に合わないんじゃないの?」

素っ気なく言い返すと、雪尋は「そうだね」と頷き、また、淡く微笑んだ。

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