《MUMEI》

おや? 今来たバスから、見慣れぬ制服の女の子が降りて来ました。

たまぁにいるんですよね。

都会に疲れて、癒しを求めて、ここへ来る人間が。

女の子はバスから降りると伸びをしました。

そしてボクの姿を見て、笑顔になりました。

どうやら動物にも癒やしを求めている人みたいです。

女の子はニンジンを買ってくれました。

ボクは食欲が強いので、食べました。

お礼をしなければいけませんね。

まあボクにできることと言えば、あの村へ案内することだけですけど。

ボクは女の子に目で語りかけます。

―ボクについて来て、と。

好奇心が強いみたいで、女の子はおもしろがってボクについて来ました。

しばらく山を登ると、あの村にたどり着きます。

ボクは近くにいた村人の足を、蹴り付けました。

村人はムッとしてボクを睨むも、女の子の姿を見ると、すぐに笑顔になりました。

「ようこそ! いらっしゃい!」

久々のお客様です。

次から次へと村人が出てきました。

すると彼女は大歓迎を受けます。

村人総出で歓迎会を開きました。

女の子は戸惑いながらも、喜んでいました。

そして夕刻、女の子は帰る時間になりました。

村で1番の美形と言われる青年が、山の麓まで送って行きました。

…何やら、春の予感です。

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