《MUMEI》

さてさて、ボクの役目はまだあります。

次の日から、ずっとバス停で女の子を待ちました。

女の子は最初、一週間に一度来ていました。

それが二度、三度と増えていき…毎日来るようになりました。

それはきっと、村人が女の子を歓迎してくれるから。

そして青年に恋をしているから。

まあ…良いことですよね。

女の子はここに癒やしを求めに来たのです。

思いっきり優しくしてくれる人がいれば、人間すがり付きたくなるものなのでしょう?

まあウサギであるボクには、分からないことですけど。

最近では村人がエサをくれるようになり、ボクも幸せです。

ある日、女の子は村の外れの湖に、青年と共に来ました。

ボクはそこでお昼寝をしていたのですが…まあ寝たフリをしましょう。

ここで自己主張すれば、野暮ってモンです。

女の子は最初、暗い面持ちでした。

悩みを青年に話していました。

青年は終始笑顔で、話を聞いてあげていました。

そして話が終わる頃には、女の子は笑顔になっていました。

やがて夕刻になり、女の子の帰る時間になりました。

しかし女の子は中々帰ろうとしません。

それどころか…青年に、帰りたくはないと言ったのです。

その時、青年の表情が満面の笑顔になりました。

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