《MUMEI》

人間であったならば、ボクの顔も笑顔を浮かべていたことでしょう。

青年は女の子の言葉を、全面肯定しました。

「ここにずっといれば良いよ!」

青年があまりに強く、そして熱く言うので、女の子はおされ気味に頷きました。

そして―女の子はここに住むようになったのです。

やがて季節は巡り…山の景色も変わってきました。

しかし村人の女の子への態度は変わらず、優しいものでした。

女の子は見違えるほどにキレイに、美しくなりました。

どうやら青年と恋人になれたみたいです。

周囲からも祝福され、幸せ絶好調というところでしょうか?

…ところがある日、女の子に変化が表れました。

村人の家族を見て、ふと自分の家族を思い出したようです。

ここにいれば、学校へも行かず、自分を傷付ける者もいないのに…。

それでも女の子の心は、揺れています。

恋しくなったのでしょう。

わりと珍しいことではありません。

その内、女の子の表情が暗くなっていきました。

村人は心配しました。

けれど女の子の心の中には、元の生活や家族のことでいっぱいになってしまったのです。

そして…女の子は言ってはいけない、その一言を、口に出してしまったのです。

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