《MUMEI》
キライなキス
「―ねぇ、あなた」

「ん?」

帰り道。呼び止められて、振り返る。

髪の長い、可愛い女の子が涙目で立っていた。

アタシの着ている制服とは違うから、別の高校の女の子か。

その可愛さに眼を奪われているうちに、

バチンッ!

…頬を叩かれた。

「あなたなんて…大ッキライ!」

そう言って、彼女はその場を去った。

たまたまアタシと一緒にいた友人二人が怒りながら彼女の背に罵声を浴びせていた。

けれどアタシは、彼女の姿が眼に焼き付いていた。

その後、友人二人が彼女のことを調べた。

この学校からそう遠くない所にある、お嬢様の女子高校の女の子らしい。

アタシと同じ歳で、成績も優秀。

そんな彼女が、アタシを叩いた理由は。

あの子の元彼が、アタシを好きになったから。

ウチの学校は進学校で、男女共学。

彼女は中学は地元の中学校に通っていたらしく、彼とはその頃付き合っていた。

高校入学してしばらくは付き合いがあったらしいけど、彼はアタシを好きになって、彼女をフッた。

そして彼女は執念でアタシのことを調べて、恨みをぶちまけに来た…と。

ちなみに彼のことは、言われて何となく思い出した。

入学して一ヵ月後に告白されたけど、断った。

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