《MUMEI》

「まあ…それらしいことかな? 一応言っておくけどアタシ、彼とは付き合っていないから」

それだけはちゃんと言いたかった。

「確かに告白されたけど、断った。その後、付き合いは一切無いから」

「知ってる…」

「あっそ…」

まあ知ってても、どうにかしたかったんだろうな。

…にしても、可愛い子だな。

女の子らしい女の子。

彼は何でこの子をフッて、アタシなんて好きになったんだろう?

こんな無頓着で無表情な女を好きになるなんて、趣味が悪すぎる。

アタシだったら…彼女を選ぶ。

こんな子と付き合えるなんて、男にとっちゃ夢だろうに…。

「…ゴメンなさい」

彼女は俯いたまま、呟いた。

…一応、悪いとは思っていたんだろうな。

「うん、まあ、コレで終わりにしよう?」

「……うん」

彼女はボロボロ泣き出した。

思っちゃいけないけど…可愛いなぁ。

彼女は泣きながらも、顔を上げた。

「わたしを叩いて」

「…はい?」

しかし彼女の口からは、とんでもない言葉が出た。

「あなたをわたしは叩いた。だからあなたも叩いて、終わりにしましょう」

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