《MUMEI》

「最初…あなたのことを知った時、腹がたったわ」

「うん」

「何でこんな女のこと好きなんだろうって、彼にも腹がたった」

「うん…」

「なのにっ…!」

ぎゅうっとアタシを抱き締め、彼女は涙を流す。

「なのに…ずっと忘れられなかった」

「…うん」

「あなたのこと、一日一時一瞬たりとも忘れたことが無かった」

「……うん」

「そして気付いたの…。わたしも彼と同じように、あなたに夢中になっているって」

「うん」

「だからっ…叩きに行ったの」

「うん」

「彼どころか、わたしまでも夢中にさせたあなたがキライだったから…!」

「うん」

アタシはぎゅっと彼女の細い体を抱き締めた。

「…あのね」

アタシは優しく声を出した。

「…何?」

「アタシも、忘れられなかったの。アナタのこと」

「えっ…?」

彼女は顔を上げ、真っ赤になった眼でアタシを見た。

「コレって…アタシもアナタに夢中ってことなのかしらね」

そう言うと、彼女はまた泣き出す。

アタシはそんな彼女に、キスをした。

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