《MUMEI》 能力悪魔の三人が、どうして世界を壊そうとしているのか、それは誰も知らない。噂だけならいくらでも飛び交っているが、誰もが納得いくような明確な理由はまだはっきりしていない。まだ、というよりも、恐らく、世界が終わってからもはっきりしないだろう。 「どうしました」 疑問符を付けた女の子の声にはっとして我に返る。少し、昔を思い出してトリップしてしまっていたみたいだ。慌てて笑顔を作り出した。 「なんでもない。そんな事より、女の子が一人でこんな時間に危険じゃないか」 話題を変えるように自分はそう言った。しかし女の子は「大丈夫ですよ」と微笑みながら言うだけで、まったく身に危険を感じていないみたいだった。しかし、夜ともなれば物騒な事も起きるだろう。悪い事を起こすなら闇に紛れられる夜が最適。そういう輩も、このご時世では少なくない。むしろ多いだろう。自分達のように。もしも動物と契約を交わした人に襲われてしまったら、こんな華奢な女の子ではどうする事もできないだろう。 世の中には、生れつき動物と会話をする事ができる人間がいる。その人間達は動物の尻尾に特殊な針を刺す事で動物を自分の支配下に起き、その動物の潜在能力を引き出す事ができる、ようだ。有名な話で、実際に動物を操る人を見かけたり、動物が自然では有り得ない現象を起こしたりという目撃情報は多くある。現に、終焉の塔に住む三人の悪魔も動物と契約する事ができ、その動物の潜在能力も使い、世界を終へ向かわせているらしい。 実際の話は知らない。遥か昔に魔女狩りが行われたように、術者狩りが行われたから、彼らの数は激減した。それに、自分が術者だと周りにバレてしまえば命を狙われてしまうのだから、まず、自ら名乗る事はないだろう。 「あなたは大丈夫なの? 家は遠いの? レオンさん」 「え? どうして」 自分の名前を知っているのか。聞こうとして、あまりの驚きに声にならなかった。すると少女はやはり微笑みを浮かべたまま「言ったじゃないですか」と言葉を続けてくれる。 「この猫ちゃんと私はお友達なんです」 「はあ」 猫と友達だから、なぜ自分の名前がわかるのだろうか。もしかして、この女の子は術者で、猫の言葉が理解できるのだろうか。 前へ |次へ |
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