《MUMEI》
プロローグ
 
―――… 199X年 …… 春 …。


――…イギリス……ハンプシャー州・ウィンチェスター郊外…。




――… オ ギャ ァ!… オ ギャ ァ!



…穏やかな風に乗って、どこからともなく元気な赤ん坊の声が聞こえてくる――…。



泣き声を辿ると、都会の喧騒から逃れるように、ひっそりと佇む孤児院があった…。



孤児院の2階にある部屋では、窓から吹きこむ風にカーテンが揺らめき――…



壁面には、天井まである大きな本棚が幾つも立ち並んでいた…。



其所には、数千冊はあろうかという膨大な書籍が整えられていた。



その書物の背表紙をかい摘んでみると――…



『凶悪知能犯罪に対抗する頭脳集団の結成』



『ワイミーズ・ハウスの創設』



『IQ200超・天才児育成プログラム』



…どれも難解な専門書らしき蔵書ばかりだった。





部屋の窓辺には、造られてから悠に100年は経とうかという重厚なデスクが据えられ――…



その上には年季の入った万年筆と、書きかけのレポートが煩雑に放置されていた。



レポートは、次のようなタイトルによって書き始められている――…





――…『 THE LAST KIRA 』

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