《MUMEI》

「真尋も、気をつけて行っておいで。最近物騒だから」

「わかってるって」

「寄り道しないで帰るんだよ。変なひとに声をかけられても、ついて行かないようにね」

「だからガキ扱いすんなってば!」

「真尋は僕の息子なんだから、子供扱いして当然でしょう?」

「父さんのそういうところ、ムカつくっ!」

むくれた息子の顔を見て、雪尋は楽しそうに笑う。真尋の反応を完全に面白がっているのだ。

父親を鬱陶しく思った真尋は、不快そうに鼻を鳴らすと、「じゃあな!」と、冷たく言い放って、雪尋から離れた。

そんな真尋の背中に向けて、雪尋は、「…いってらっしゃい」と、またしてもやんわりと声をかけるのだった。



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